2011年01月06日
AX英語版、米PW批評家投票に選出される!
アメリカの出版界に大きな影響力を持つPublishers Weekly(PW)で、その年に発売された本をPWのレギュラーレビュアーが選ぶ「Critics Poll」という恒例企画があります。去年一年間にアメリカで発売されたコミックス(マンガに限りません)の中でこれはと思うものに各レビュアーが投票して、その結果を発表するというものです。一昨日発表されたこのCritics Pollで、アックス英語版が3票獲得!一位のクリス・ウェア「Acme Novelty Library #20」が4票ですからアックスは二位!続きを読む
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2010年12月06日
松本正彦さん「たばこ屋の娘」アングレームノミネート
なんとか12月売りアックス78号の入稿作業も終わりましたが、その直前にヒドい風邪をひいたりしてここに書くべきことが大分溜まってしまいました。まずは嬉しいニュース。松本正彦さん「たばこ屋の娘」仏語版が来年一月のアングレーム国際バンド・デシネフェスティバルの「遺産賞」にノミネートです。と、ここでふと疑問が…。続きを読む
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2010年09月10日
勝又進「赤い雪」英語版、Ignatz Awardノミネート!
全然知らなかったんですが、勝又進さんの「赤い雪」英語版、Drawn & Quarterlyから出版された「Red Snow」がアメリカのIgnatz Award「優秀短編集」部門にノミネートされてました。
Ignatz Awardsは他にも作家部門や長編部門、新人部門など全部で9つのセクションがあり、5人のマンガ家によってノミネート作品が選ばれ、あとは毎年開催されるSmall Press Expoの参加者の投票によって受賞作が決まるということです。Small Press Expoというからには、アメリカで小出版社あるいはインディーズ出版として発表された作品の中から優秀作を選ぶという賞なのでしょう。
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Ignatz Awardsは他にも作家部門や長編部門、新人部門など全部で9つのセクションがあり、5人のマンガ家によってノミネート作品が選ばれ、あとは毎年開催されるSmall Press Expoの参加者の投票によって受賞作が決まるということです。Small Press Expoというからには、アメリカで小出版社あるいはインディーズ出版として発表された作品の中から優秀作を選ぶという賞なのでしょう。
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2010年04月09日
「黒い吹雪」英語版発売中…か!?
辰巳ヨシヒロさんの「黒い吹雪」英語版、「Black Blizzard」、カナダD&Qからもう出ているようです。「出ているようです」って、こちらにはまだ届いてないのでわからない。海外版の場合、先方の出版社の担当者がしっかりしていれば発売と同時にきちんと送ってくれるのですが、まず八割方の出版社はいい加減で、こちらから催促しないと献本も送って来やしないとこが多いんです(泣)。
ホントに出てるのかどうか、下記リンクでAmazonに注文すればわかるかも!
……というわけでこの出版不況の中、あの手この手で少しでも入金を増やさないと本当にどうにもならんので、遅ればせながらアフィリエイト始めました。
ところで昨日はセルビアで新しく出版社を立ち上げたというPredragさんが来社。小さくて貧乏で政情も不安定な国なので、翻訳版を出すといっても初版500部の世界。来日して一応大手出版社も回ったけど、全然相手にされなかったとか。そりゃまあ、そうでしょうね…。青林工藝舎としても500部じゃ手間がかかるだけでどうしようもないんだけど、個人的にはいわゆる「先進国」よりもこういう国からオファーが来た方が嬉しいです。セルビアではまだ日本のコマーシャルなマンガさえ翻訳されてないそうなんですが、彼が出したいと言ってきたのはつげ義春さんと辰巳ヨシヒロさん。「なんでまた?」というこちらの質問に、祖国を離れてフランスで暮らしているという彼は「普段はマンガを全然読まないし興味もなかったんだけど、書店でフランス語版の『無能の人』を見かけ、何気なく手にとって一気に引き込まれた。ここで描かれている世界はセルビアの人たちにとっても共感を得られるはずだと思って、是非セルビアでこれを出したいと思い、友だちと一緒に出版社を立ち上げることにしたんです」とのこと。残念ながら今のところつげさんは海外版の出版には全く乗り気でないので、彼の希望通りになる可能性は限りなく低いんですが、「ビジネスとして成り立つかどうかよりも、とにかくセルビアの読者に優れた作品を読んで欲しいと思ったんです。お金よりも生き甲斐の方が大事でしょう?」とまで言われてしまってはもう一肌脱ぐほかないか。たいていの場合、こういうこと言う人は事業には失敗するんですけどね(笑)。でも前例のない新しいことを一緒にやれるというのは楽しいですし。それとセルビアというかユーゴスラビアには、第二次大戦中にパルチザンを組織してナチス・ドイツと戦い、追い出したという事実の他に、個人的な興味もありまして。というのも旧ユーゴスラビアとかチェコとか、東欧のレコード(80年代プレス)は何故か非常に音がいいんですよ(笑)。湯浅学さんのビートルズアナログ本ではそのへんも紹介しようと思ってるんです。他にも、南アフリカとかインドとか、思わぬ国の思わぬ盤が素晴らしい音だったりするのはなんなんでしょう。不思議でしょうがないです。
あとそれからもう一つ耳寄りな情報を。中野のタコシェさんに、林静一さんの「赤色エレジー」フランス語版が入荷した模様です。定価22ユーロが2800+税とは良心的すぎる!これじゃ儲けは出るのか?というわけでこちらもよろしく。(浅)
ホントに出てるのかどうか、下記リンクでAmazonに注文すればわかるかも!
……というわけでこの出版不況の中、あの手この手で少しでも入金を増やさないと本当にどうにもならんので、遅ればせながらアフィリエイト始めました。
ところで昨日はセルビアで新しく出版社を立ち上げたというPredragさんが来社。小さくて貧乏で政情も不安定な国なので、翻訳版を出すといっても初版500部の世界。来日して一応大手出版社も回ったけど、全然相手にされなかったとか。そりゃまあ、そうでしょうね…。青林工藝舎としても500部じゃ手間がかかるだけでどうしようもないんだけど、個人的にはいわゆる「先進国」よりもこういう国からオファーが来た方が嬉しいです。セルビアではまだ日本のコマーシャルなマンガさえ翻訳されてないそうなんですが、彼が出したいと言ってきたのはつげ義春さんと辰巳ヨシヒロさん。「なんでまた?」というこちらの質問に、祖国を離れてフランスで暮らしているという彼は「普段はマンガを全然読まないし興味もなかったんだけど、書店でフランス語版の『無能の人』を見かけ、何気なく手にとって一気に引き込まれた。ここで描かれている世界はセルビアの人たちにとっても共感を得られるはずだと思って、是非セルビアでこれを出したいと思い、友だちと一緒に出版社を立ち上げることにしたんです」とのこと。残念ながら今のところつげさんは海外版の出版には全く乗り気でないので、彼の希望通りになる可能性は限りなく低いんですが、「ビジネスとして成り立つかどうかよりも、とにかくセルビアの読者に優れた作品を読んで欲しいと思ったんです。お金よりも生き甲斐の方が大事でしょう?」とまで言われてしまってはもう一肌脱ぐほかないか。たいていの場合、こういうこと言う人は事業には失敗するんですけどね(笑)。でも前例のない新しいことを一緒にやれるというのは楽しいですし。それとセルビアというかユーゴスラビアには、第二次大戦中にパルチザンを組織してナチス・ドイツと戦い、追い出したという事実の他に、個人的な興味もありまして。というのも旧ユーゴスラビアとかチェコとか、東欧のレコード(80年代プレス)は何故か非常に音がいいんですよ(笑)。湯浅学さんのビートルズアナログ本ではそのへんも紹介しようと思ってるんです。他にも、南アフリカとかインドとか、思わぬ国の思わぬ盤が素晴らしい音だったりするのはなんなんでしょう。不思議でしょうがないです。
あとそれからもう一つ耳寄りな情報を。中野のタコシェさんに、林静一さんの「赤色エレジー」フランス語版が入荷した模様です。定価22ユーロが2800+税とは良心的すぎる!これじゃ儲けは出るのか?というわけでこちらもよろしく。(浅)
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2010年02月18日
林静一「赤色エレジー」フランス語版(Cornelius)
林静一さんの「赤色エレジー」がまもなくフランスで発売になります。
先月のアングレームフェスティバルでも大好評だったというこの作品。
滞在中にパリのポンピドゥ・センターで行われた講演の模様の英語訳も、こちらで読めます。
アングレームへは、2005年に辰巳ヨシヒロさんが参加。
2009年には平田弘史さんも参加しました。
先月のアングレームフェスティバルでも大好評だったというこの作品。
滞在中にパリのポンピドゥ・センターで行われた講演の模様の英語訳も、こちらで読めます。
アングレームへは、2005年に辰巳ヨシヒロさんが参加。
2009年には平田弘史さんも参加しました。
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2010年02月17日
平田弘史「無名の人々 異色列伝」スペイン語版(Glenat Spain)
平田弘史さんの「無名の人々 異色列伝」がスペインのグレナから発売中です。
グレナはスペインでも大手ですが、平田さんの他にも丸尾末広さんの作品を大判で出していたり、なかなか個性的(笑)。スペインではグレナの他にドルメンという出版社からも「薩摩義士伝」が出版されています。スペイン語版の「異色列伝」は、日本語版のデザインを生かしながらも背景の色は血のような赤!「闘牛!」みたいな雰囲気ですね(笑)。平田弘史が闘牛劇画を描いたらどうなるんだろう、と、ついつい妄想してしまうようなカバーであります。「ひえもんとり」で逃げ延びた罪人がスペインに渡り闘牛士に……平田作品には「剣豪西部へ行く」という貸本時代の傑作もありますからあり得ない話でもないと考えると、そんな作品を読んだような気がしてこなくもないから不思議です。
ちなみに現在、松文館から平田作品のコンビニ本が続々と出ていまして、先月の「駿河城御前試合」に続き今月2月26日には「斬る!!〜座頭市&人斬り岡田以蔵伝〜」、来月は「弓道士魂」が出ます。見つけたら絶対買うべき!(浅)


グレナはスペインでも大手ですが、平田さんの他にも丸尾末広さんの作品を大判で出していたり、なかなか個性的(笑)。スペインではグレナの他にドルメンという出版社からも「薩摩義士伝」が出版されています。スペイン語版の「異色列伝」は、日本語版のデザインを生かしながらも背景の色は血のような赤!「闘牛!」みたいな雰囲気ですね(笑)。平田弘史が闘牛劇画を描いたらどうなるんだろう、と、ついつい妄想してしまうようなカバーであります。「ひえもんとり」で逃げ延びた罪人がスペインに渡り闘牛士に……平田作品には「剣豪西部へ行く」という貸本時代の傑作もありますからあり得ない話でもないと考えると、そんな作品を読んだような気がしてこなくもないから不思議です。
ちなみに現在、松文館から平田作品のコンビニ本が続々と出ていまして、先月の「駿河城御前試合」に続き今月2月26日には「斬る!!〜座頭市&人斬り岡田以蔵伝〜」、来月は「弓道士魂」が出ます。見つけたら絶対買うべき!(浅)


posted by 青林工藝舎 at 23:43
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勝又進「赤い雪」英語版(Drawn & Quarterly)
紹介が遅くなりましたが、勝又進さんの「赤い雪」英語版が去年の暮れにカナダで発売されました。版元は辰巳ヨシヒロさんや林静一さんの作品を出しているDrawn & Quarterly。
収録作品は日本語版のままですが、日本語版の巻末年譜、解説のかわりに、勝又さんの生前、アックスで掲載したインタビューと、亡くなった後の「勝又進 人と作品」を収録しました。
辰巳ヨシヒロ作品が翻訳出版され、大きな反響を得て以降、欧米では「GEKIGA」といえば「日本のオルタナティヴ・コミックのルーツ」と認識されるようになりましたが、一方で近く出版される予定のアックスベスト版「AX Collection」まで「GEKIGA Anthology」とか言われてちょっとおかしなことになっております。
情報が少ないだけに、人から人へと伝わる間に元の意味とは微妙に変わってきてしまうのかも(笑)。
もっとも、情報の少なさのせいかどうかわかりませんが、読者は余計な先入観なしにまっすぐに作品と向き合ってくれているようです。
The Comics JournalやJapan Times、Torontoistのレビューなどなかなか的確でハッとする指摘も。ブログなどで去年翻訳されたマンガのベスト10に挙げてくれているいるようで嬉しい限りです。Japan TimesのDavid Cozyは、"はっきりとした解決のない"作品のエンディングに触れ、"最後のページをめくった後に、物語は読み手の心の中で続くことになる"と書いてくれています。その終わらない流れのなかに勝又さんがいて、そのうちどこかの国で誰かが描いたマンガの中に、同じ"流れ"を見つけ出すことがあるかもしれません。(浅)




収録作品は日本語版のままですが、日本語版の巻末年譜、解説のかわりに、勝又さんの生前、アックスで掲載したインタビューと、亡くなった後の「勝又進 人と作品」を収録しました。
辰巳ヨシヒロ作品が翻訳出版され、大きな反響を得て以降、欧米では「GEKIGA」といえば「日本のオルタナティヴ・コミックのルーツ」と認識されるようになりましたが、一方で近く出版される予定のアックスベスト版「AX Collection」まで「GEKIGA Anthology」とか言われてちょっとおかしなことになっております。
情報が少ないだけに、人から人へと伝わる間に元の意味とは微妙に変わってきてしまうのかも(笑)。
もっとも、情報の少なさのせいかどうかわかりませんが、読者は余計な先入観なしにまっすぐに作品と向き合ってくれているようです。
The Comics JournalやJapan Times、Torontoistのレビューなどなかなか的確でハッとする指摘も。ブログなどで去年翻訳されたマンガのベスト10に挙げてくれているいるようで嬉しい限りです。Japan TimesのDavid Cozyは、"はっきりとした解決のない"作品のエンディングに触れ、"最後のページをめくった後に、物語は読み手の心の中で続くことになる"と書いてくれています。その終わらない流れのなかに勝又さんがいて、そのうちどこかの国で誰かが描いたマンガの中に、同じ"流れ"を見つけ出すことがあるかもしれません。(浅)



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2009年12月11日
辰巳作品、シンガポールで映画化!
昨日は急きょ来年一月に発売が決まった辰巳ヨシヒロ氏の初期作品「黒い吹雪」巻末用インタビューに神保町まで。インタビュアーは「劇画漂流」解説も書いて下さった中野晴行氏。1956年、大阪は細工谷での辰巳ヨシヒロ、松本正彦、さいとう・たかをの合宿直後に執筆された「黒い吹雪」は、まだ「劇画」という言葉こそ使ってはいないものの、新たな手法を模索していた辰巳氏の初期の試みの完成形ともいえる革新性を持ち、その後のマンガ表現全体を大きく変えることになるきっかけとなった記念すべき作品です。その意味では、手塚治虫の「新寳島」と並びうる、戦後マンガ史における最重要作と言っていいでしょう。冒頭の列車の脱線シーンから、吹き荒れる吹雪の斜線、視点を変えながら読者を作品世界へと引き込むコマ運び、斬新な構図、どこをとってもカッコ良すぎです!カラーページもそのままに完全復刻しますのでお楽しみに。
さて、その辰巳氏の作品がシンガポールで映画化されることが決定したと聞いていたので、今日はそのへんもお聞きしてきました。映画のタイトルは「TATSUMI」。えっ?「タツミ」って?作品の映画化じゃないの?…よくよく聞いてみれば、小社刊「大発見」収録作など、辰巳氏の短編六本を主軸に「劇画漂流」で描かれた辰巳氏の半生も絡めた異色作になるようです。となるとセミ・ドキュメントタッチ?果たしてどのような映画に仕上がるのか、今後も新たな情報が入り次第お伝えいたします。監督は昨年のカンヌ映画祭で「My Magic」がノミネートされ、高い評価を受けたエリック・クー氏。辰巳氏の公式サイトには先頃来日した監督と、辰巳氏との会見の模様などがレポートされています。
実はこれまでにも、メジャーからアマチュアまで、辰巳氏の作品を映像化したいというオファーは世界中から来ています。資金面などの問題でいまのところ実現はしていないのですが、辰巳作品には映像作家の創作意欲を刺激する何かがあるようです。元々は映画の影響で生まれた「劇画」が、その誕生から50年を経て、逆に新たな表現を目指す映像作家に影響を与えはじめているのかもしれません。辰巳氏の「劇画」がまいた種は、今、世界でその芽が開きつつあります。
そんな動きを実感されられるのが、今年のアメリカでの「劇画漂流」旋風(!?)。New York Timesで大々的に取り上げられたのは記憶に新しいですが、今年発売された優れた本を紹介するいくつかのサイトでもベスト10に選ばれています。
●Publishers Weekly
Best Books of 2009
Comicsセクション(リンクページのまん中辺)
●Amazon
Best Books of 2009
Top 10 Books: Comics & Graphic Novels
カスタマーレビューもたくさん!
今年の手塚治虫文化賞、大賞受賞で、ようやく日本でも正当に評価された感のある辰巳作品、しかし、日本マンガがまだほとんど翻訳されていなかった80年代から各国で翻訳版が出版されていたことからもわかるように、最初にその価値に気付いたのは欧米諸国でした。カナダのD&Qから辰巳氏に続き翻訳された勝又進氏の「赤い雪」も、早くも多くの反響があるようです。「赤い雪」の反響といえば、フランス語版が出た時に読者の感想として読んでいてすごく嬉しかった一文がありました。それとまったく同じ感想を、アメリカでも書いていた人がいました。「はっきりとした結末が描かれているわけではないけれども、最後のページを閉じたあと、読み手の中でストーリーがずっと生き続ける」という一節です。勝又氏が言っていた「いのちの流れ」に、また出会えた気がしました。「赤い雪」も本が届き次第紹介します。(浅)
さて、その辰巳氏の作品がシンガポールで映画化されることが決定したと聞いていたので、今日はそのへんもお聞きしてきました。映画のタイトルは「TATSUMI」。えっ?「タツミ」って?作品の映画化じゃないの?…よくよく聞いてみれば、小社刊「大発見」収録作など、辰巳氏の短編六本を主軸に「劇画漂流」で描かれた辰巳氏の半生も絡めた異色作になるようです。となるとセミ・ドキュメントタッチ?果たしてどのような映画に仕上がるのか、今後も新たな情報が入り次第お伝えいたします。監督は昨年のカンヌ映画祭で「My Magic」がノミネートされ、高い評価を受けたエリック・クー氏。辰巳氏の公式サイトには先頃来日した監督と、辰巳氏との会見の模様などがレポートされています。
実はこれまでにも、メジャーからアマチュアまで、辰巳氏の作品を映像化したいというオファーは世界中から来ています。資金面などの問題でいまのところ実現はしていないのですが、辰巳作品には映像作家の創作意欲を刺激する何かがあるようです。元々は映画の影響で生まれた「劇画」が、その誕生から50年を経て、逆に新たな表現を目指す映像作家に影響を与えはじめているのかもしれません。辰巳氏の「劇画」がまいた種は、今、世界でその芽が開きつつあります。
そんな動きを実感されられるのが、今年のアメリカでの「劇画漂流」旋風(!?)。New York Timesで大々的に取り上げられたのは記憶に新しいですが、今年発売された優れた本を紹介するいくつかのサイトでもベスト10に選ばれています。
●Publishers Weekly
Best Books of 2009
Comicsセクション(リンクページのまん中辺)
●Amazon
Best Books of 2009
Top 10 Books: Comics & Graphic Novels
カスタマーレビューもたくさん!
今年の手塚治虫文化賞、大賞受賞で、ようやく日本でも正当に評価された感のある辰巳作品、しかし、日本マンガがまだほとんど翻訳されていなかった80年代から各国で翻訳版が出版されていたことからもわかるように、最初にその価値に気付いたのは欧米諸国でした。カナダのD&Qから辰巳氏に続き翻訳された勝又進氏の「赤い雪」も、早くも多くの反響があるようです。「赤い雪」の反響といえば、フランス語版が出た時に読者の感想として読んでいてすごく嬉しかった一文がありました。それとまったく同じ感想を、アメリカでも書いていた人がいました。「はっきりとした結末が描かれているわけではないけれども、最後のページを閉じたあと、読み手の中でストーリーがずっと生き続ける」という一節です。勝又氏が言っていた「いのちの流れ」に、また出会えた気がしました。「赤い雪」も本が届き次第紹介します。(浅)
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2009年12月07日
「どくだみ荘」仏語版、アングレーム大賞候補に!
先日フランス語版が発売された「どくだみ荘伝説」、版元の「黒蜥蜴」ステファンによれば、発売前のプロモーションの段階で評論家などから少なくない反響があったとのことで、あちらのネットや雑誌でもたくさん取り上げられています。「日本マンガ界のブコウスキー」とか、「ロバート・クラムの日本版」とか、巻末の年譜を読んで、作者の福谷たかし氏自身の生涯と絡めて紹介してくれているところも多いようで、早くも「続きが読みたい」という声が版元に数多く寄せられているとか。
そんな中、2010年の1月最終週にアングレームで開催されるアングレーム国際コミックフェスティバルの大賞候補にノミネートされたとの知らせが! アングレームの公式サイトでも先週アナウンスが出てました。
http://www.bdangouleme.com/48-selection-2010-selection-officielle
日本マンガの翻訳版としては他に間瀬元朗「イキガミ」、本宮ひろ志「まだ、生きてる」がノミネートされています。その他のノミネート作としては、「アックス」韓国オルタナ特集でも掲載した期待の星、アンコの作品がノミネートされているのが嬉しいですね。ちなみにこの本の版元は青林工藝舎のタイトルのフランス語版を多数出しているCorneliusです。
日本マンガのノミネート作の中では、本宮氏の「まだ、生きてる」が、日本での一般的な評価とは対照的に高く評価されているらしいのがアングレーム独自というか、フランス独自のセレクトですね。通常の氏の作品からすると相当異色なこの作品は、定年を迎えた途端、家族に見捨てられ、山にこもって一人で生活しだす男、岡田憲三が主人公。そこが今の時代に合っていたのかもしれません。本宮氏といえばデビューは大阪日の丸文庫。「まだ、生きてる」は本宮作品全体の中に置いてみると相当異色ですが、「日の丸作家」としての括りで見るとむしろ納得。というのも、辰巳ヨシヒロ、平田弘史、山松ゆうきちといった一連の「日の丸ライン」に通じる“外れ者の系譜”を感じさせる部分が多々あるんですよ。
そうした異色作がノミネートされた今回のアングレームのセレクションを見ると、「どくだみ荘」が選ばれたのもこの未曾有の大不況と無縁ではない気がしますね。実際、「普通ならとてつもなく暗くなってしまう題材を取り上げながら、主人公のヨシオはいつも明るく、ユーモアを感じさせる内容になっているところがいい」といった反響もあるようです。「黒蜥蜴」の公式ブログでは、「どくだみ荘」ノミネートに合わせ、プロモーション用に作られたどくだみアニメが公開中です。これまたよくできてます!
http://lezardnoir.blogspot.com/index.html
見てわかる通り11月からの「黒蜥蜴」のブログ、「どくだみ」関連ばっかりですね〜! それだけ反響が大きいということでしょうか。
それはそれとして、その他の海外版、平田弘史作品「無名の人々 異色列伝」スペイン語版と勝又進「赤い雪」英語版はとっくに出てるはずなのにまだ会社に届きません。送料ケチって船便で送ってるんじゃないだろうな。(浅)
そんな中、2010年の1月最終週にアングレームで開催されるアングレーム国際コミックフェスティバルの大賞候補にノミネートされたとの知らせが! アングレームの公式サイトでも先週アナウンスが出てました。
http://www.bdangouleme.com/48-selection-2010-selection-officielle
日本マンガの翻訳版としては他に間瀬元朗「イキガミ」、本宮ひろ志「まだ、生きてる」がノミネートされています。その他のノミネート作としては、「アックス」韓国オルタナ特集でも掲載した期待の星、アンコの作品がノミネートされているのが嬉しいですね。ちなみにこの本の版元は青林工藝舎のタイトルのフランス語版を多数出しているCorneliusです。
日本マンガのノミネート作の中では、本宮氏の「まだ、生きてる」が、日本での一般的な評価とは対照的に高く評価されているらしいのがアングレーム独自というか、フランス独自のセレクトですね。通常の氏の作品からすると相当異色なこの作品は、定年を迎えた途端、家族に見捨てられ、山にこもって一人で生活しだす男、岡田憲三が主人公。そこが今の時代に合っていたのかもしれません。本宮氏といえばデビューは大阪日の丸文庫。「まだ、生きてる」は本宮作品全体の中に置いてみると相当異色ですが、「日の丸作家」としての括りで見るとむしろ納得。というのも、辰巳ヨシヒロ、平田弘史、山松ゆうきちといった一連の「日の丸ライン」に通じる“外れ者の系譜”を感じさせる部分が多々あるんですよ。
そうした異色作がノミネートされた今回のアングレームのセレクションを見ると、「どくだみ荘」が選ばれたのもこの未曾有の大不況と無縁ではない気がしますね。実際、「普通ならとてつもなく暗くなってしまう題材を取り上げながら、主人公のヨシオはいつも明るく、ユーモアを感じさせる内容になっているところがいい」といった反響もあるようです。「黒蜥蜴」の公式ブログでは、「どくだみ荘」ノミネートに合わせ、プロモーション用に作られたどくだみアニメが公開中です。これまたよくできてます!
http://lezardnoir.blogspot.com/index.html
見てわかる通り11月からの「黒蜥蜴」のブログ、「どくだみ」関連ばっかりですね〜! それだけ反響が大きいということでしょうか。
それはそれとして、その他の海外版、平田弘史作品「無名の人々 異色列伝」スペイン語版と勝又進「赤い雪」英語版はとっくに出てるはずなのにまだ会社に届きません。送料ケチって船便で送ってるんじゃないだろうな。(浅)
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2009年11月06日
どくだみフランス語版届きました。
青林工藝舎版より大きなA5判、海外版によくある逆版処理はせず、巻末年譜も全部翻訳した立派な本になりました!本から起こしたとはわからないほど印刷もキレイ!この本のオリジナル版はアナログ製版で作ったので、例によってデータはなかったんですが、ステファンが来日した時「データが上手に作れない」というので、印刷物からデータを作成する際のスキャナの設定を教えたら「わかった。全部やりなおしてみる」と一度作ったデータを破棄して一からスキャンしなおしたんでした。そんな彼のこだわりがあふれた、いい本になったと思います。
なんといっても、「どくだみ荘」のバカバカしい名シーンの数々(写真参照)がフランス語になってるのに感動……バカなシーンに感動するのも変ですが…。「どくだみ荘」といえば自分の高校時代に、つげ作品と並んでバイブルのように読みふけってた作品なので(笑)、その作品のセレクト版を作った上にフランス語版の橋渡しも出来るなんて感無量であります。
巻末年譜も苦労してまとめ上げただけに、それをそのままフランス語版にも入れてくれたのは嬉しいですねぇ。こんなめんどくさいこと、普通の版元はしませんよ。翻訳の都スロコンブさん、お疲れ様でした。それからフランス版への写真の使用をこころよく許可してくださったカメラマンの佐藤和孝さんにも感謝。
というわけで、早速福谷さんの奥様がやっている阿佐ヶ谷のお店にこれから届けようと思います。今日はおいしい酒が飲めそう、というか、ちょっと悪酔いしそうです(笑)。(浅)




なんといっても、「どくだみ荘」のバカバカしい名シーンの数々(写真参照)がフランス語になってるのに感動……バカなシーンに感動するのも変ですが…。「どくだみ荘」といえば自分の高校時代に、つげ作品と並んでバイブルのように読みふけってた作品なので(笑)、その作品のセレクト版を作った上にフランス語版の橋渡しも出来るなんて感無量であります。
巻末年譜も苦労してまとめ上げただけに、それをそのままフランス語版にも入れてくれたのは嬉しいですねぇ。こんなめんどくさいこと、普通の版元はしませんよ。翻訳の都スロコンブさん、お疲れ様でした。それからフランス版への写真の使用をこころよく許可してくださったカメラマンの佐藤和孝さんにも感謝。
というわけで、早速福谷さんの奥様がやっている阿佐ヶ谷のお店にこれから届けようと思います。今日はおいしい酒が飲めそう、というか、ちょっと悪酔いしそうです(笑)。(浅)




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フランス語版「どくだみ荘」宣伝ポスター
posted by 青林工藝舎 at 16:22
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2009年11月02日
楠勝平さんフランス語版
青林工藝舎の単行本、実は海外でもたくさん翻訳されております。たまにはそのへんもご報告しておきましょう。今月は海外版単行本ラッシュでいろいろ届く予定です。まずは楠勝平さんの『彩雪に舞う…』フランス語版『La Promesse』がコーネリウスより。
収録作品は「名刀」「おせん」「参加」「茎」「臨時ニュース」「地獄」「大部屋」「達磨さん達磨さん…」「彩雪に舞う…」の9作品で、オリジナル版の『彩雪に舞う…』からセレクトした約300ページ。
出版社のコーネリウスは、2006年に出した水木しげる氏の「のんのんばあ」が2007年アングレーム国際コミックフェスティバルで日本人作家として初の大賞を受賞するなど、規模は小さいながらもこだわりのセレクトと本作りで高く評価されています。社長のジャンルイはめちゃくちゃ完璧主義者。『彩雪に舞う…』も、元の日本語版は半分デジタル、半分アナログで作ったのでアナログ製版分の作品はデータがなかったのですが、そこは本作りの●●●●であるジャンルイのこと、「できる限りきれいな本にしたい」と、海外版によくあるような本からの複写ではなく、わざわざ日本版の印刷用フィルムを複製してそこからデータ化するという、おそろしく手間とお金のかかる方法でこの本を作ったのでした。元々日本のマンガが大好きで、日本に来ると神保町や中野まんだらけでビンテージマンガを山ほど買い漁る彼ですが、今月は水木しげる氏のパーティに参加するために来日するとか。前回来日した時に神保町で田河水泡の「蛸の八チャン」を見つけて、「今日はこの本抱いて寝る!」とか驚喜した姿が忘れられません(笑)。
今月は他にも、スペインのグレナより平田弘史氏の『無名の人々 異色列伝 Héroes Anónimos』、フランス、黒トカゲより福谷たかし氏『どくだみ荘伝説 le Vagabond de Tokyo』、カナダ、D&Qより勝又進氏『赤い雪 Red Snow』、逆柱いみり氏『赤タイツ男 The Box Man』が出る予定。アメリカTop Shelfからのアックスベスト版『AX Collection』も、中身の編集はほぼ終わったので来年には出る予定です。平田弘史作品は、既にフランスのデルクールより多数翻訳されていて、青林工藝舎の『無名の人々』『日本凄絶史』も出てますし、来年早々には『お父さん物語』も出ます。フランスの黒トカゲ(le Lezard Noir)はこれまで主に丸尾末広氏などの作品を出版しながら、子供向けの絵本や「ムーミン」シリーズも手掛けていて、社長のステファンはこれまた日本のアングラ文化に異常に詳しい(笑)。今回の「どくだみ荘」フランス語版タイトルは、オリジナルタイトルの「どくだみ荘」ではフランスの読者にわかりにくいので作品の内容から何かわかりやすいタイトルをつけようと二人で相談し、ステファンが「主人公のヨシオは東京を漂流してるから、『東京流れ者』って感じだね!」「鈴木清順かよ!」「そうそう。竹越ひろ子の歌も最高!」ということで決定したのでした。カナダのD&Qは辰巳ヨシヒロ氏の一連の作品や、林静一氏の「赤色エレジー」も出していますが、今後もオルタナ系作家の作品を続々翻訳出版していく予定で、鈴木翁二氏、安部慎一氏のベスト版、松本正彦「劇画バカたち!!」なども決定。Top Shelfからの『AX Collection』は、発売が公式にアナウンスされてすぐに、アメリカのコミックファンが集まる数々のサイトにスレッドが立ち、発売前から大盛り上がりのようです。
またコーネリウスからはこれまでにもクリハラタカシ「ツノ病」、安部慎一「やさしい人」(フランスオリジナル編集によるベスト版)、勝又進「赤い雪」、辰巳ヨシヒロ「大発掘」が翻訳出版されているので、いずれまた機会があれば紹介したいと思います。(浅)

収録作品は「名刀」「おせん」「参加」「茎」「臨時ニュース」「地獄」「大部屋」「達磨さん達磨さん…」「彩雪に舞う…」の9作品で、オリジナル版の『彩雪に舞う…』からセレクトした約300ページ。
出版社のコーネリウスは、2006年に出した水木しげる氏の「のんのんばあ」が2007年アングレーム国際コミックフェスティバルで日本人作家として初の大賞を受賞するなど、規模は小さいながらもこだわりのセレクトと本作りで高く評価されています。社長のジャンルイはめちゃくちゃ完璧主義者。『彩雪に舞う…』も、元の日本語版は半分デジタル、半分アナログで作ったのでアナログ製版分の作品はデータがなかったのですが、そこは本作りの●●●●であるジャンルイのこと、「できる限りきれいな本にしたい」と、海外版によくあるような本からの複写ではなく、わざわざ日本版の印刷用フィルムを複製してそこからデータ化するという、おそろしく手間とお金のかかる方法でこの本を作ったのでした。元々日本のマンガが大好きで、日本に来ると神保町や中野まんだらけでビンテージマンガを山ほど買い漁る彼ですが、今月は水木しげる氏のパーティに参加するために来日するとか。前回来日した時に神保町で田河水泡の「蛸の八チャン」を見つけて、「今日はこの本抱いて寝る!」とか驚喜した姿が忘れられません(笑)。
今月は他にも、スペインのグレナより平田弘史氏の『無名の人々 異色列伝 Héroes Anónimos』、フランス、黒トカゲより福谷たかし氏『どくだみ荘伝説 le Vagabond de Tokyo』、カナダ、D&Qより勝又進氏『赤い雪 Red Snow』、逆柱いみり氏『赤タイツ男 The Box Man』が出る予定。アメリカTop Shelfからのアックスベスト版『AX Collection』も、中身の編集はほぼ終わったので来年には出る予定です。平田弘史作品は、既にフランスのデルクールより多数翻訳されていて、青林工藝舎の『無名の人々』『日本凄絶史』も出てますし、来年早々には『お父さん物語』も出ます。フランスの黒トカゲ(le Lezard Noir)はこれまで主に丸尾末広氏などの作品を出版しながら、子供向けの絵本や「ムーミン」シリーズも手掛けていて、社長のステファンはこれまた日本のアングラ文化に異常に詳しい(笑)。今回の「どくだみ荘」フランス語版タイトルは、オリジナルタイトルの「どくだみ荘」ではフランスの読者にわかりにくいので作品の内容から何かわかりやすいタイトルをつけようと二人で相談し、ステファンが「主人公のヨシオは東京を漂流してるから、『東京流れ者』って感じだね!」「鈴木清順かよ!」「そうそう。竹越ひろ子の歌も最高!」ということで決定したのでした。カナダのD&Qは辰巳ヨシヒロ氏の一連の作品や、林静一氏の「赤色エレジー」も出していますが、今後もオルタナ系作家の作品を続々翻訳出版していく予定で、鈴木翁二氏、安部慎一氏のベスト版、松本正彦「劇画バカたち!!」なども決定。Top Shelfからの『AX Collection』は、発売が公式にアナウンスされてすぐに、アメリカのコミックファンが集まる数々のサイトにスレッドが立ち、発売前から大盛り上がりのようです。
またコーネリウスからはこれまでにもクリハラタカシ「ツノ病」、安部慎一「やさしい人」(フランスオリジナル編集によるベスト版)、勝又進「赤い雪」、辰巳ヨシヒロ「大発掘」が翻訳出版されているので、いずれまた機会があれば紹介したいと思います。(浅)


posted by 青林工藝舎 at 21:44
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