2009年12月23日

マディ上原さんのこと。本日通夜。

 20日の日記で、18日に蛭子さんたちととある事で渋谷に集合、と記しましたが、とある事とは、マディ上原さんが倒れて運ばれた、という連絡を受け、みんなで広尾の日赤病院まで駆けつけたのでした。すでに意識はなく昏睡状態で、肺も心臓も機械の力で動かしている、という最悪の状況でした。担当医に「手術は出来ないのですか?」と尋ねると「この状態では無理です。回復の見込みもありません」という本当に残念な応えでした。意識がないといっても別の意識が働いていると信じ、マディさんに呼びかけました。
 連絡をくれたのはあきやまみみこさんでした。最近マディさんが懇意にされていたパラダイス山本さんから連絡があったそうです。
 病院に着くと、ここ数年、マディさんと暮らしていたSさんがいらっしゃいしました。Sさんの話では、いつも自分が仕事から帰ると駅まで迎えに来てくれていたのに、17日はその姿もなく携帯に電話しても出ないので急いで家に帰ったところ、マディさんは部屋で倒れていて、その様子が尋常ではなかったのですぐに救急車を呼んだ、とのことでした。Sさんの気持ちを思うと胸が詰まりました。
 また、Sさんと病院の方からマディさんの親族の連絡先が分からなくてとても困っている、との話もあきやまさんに聞いていたので、同行した松文館の菅野さんに、原律子さんに連絡をとっていただき、やっと連絡をとることが出来たのです。原さんもとても驚かれていたようです。

 本当は親族しか面会が出来ない、ということでしたが最初に駆けつけたあきやまさんをはじめ、病院にお願いして会わせてていただきました。当日千葉に取材に行かれていた根本敬さんも翌日その足で病院に行かれました。今月頭にビリケンで行われた「亀コロ」展にマディさんが顔を出してくれたそうで「こないだ会ったばかりなのに…」と言葉を詰まらせていました。つい数日前まで一緒にゲームを楽しんでいた友沢ミミヨさんも駆けつけました。「息をしているうちに近しい人たちに会って欲しい」というSさんの願いは当然だと思います。みんなそれぞれにマディさんに話しかけ心の中でお別れをしたのです。

 マディさんは「ガロ」に描くよりも先に「劇画カルメン」「劇画ピラニア」で作品を発表されていました。そのころ谷岡ヤスジさんのアシスタントもされていて、谷岡さんのマンガによく登場していました。当時この官能劇画誌を編集されていたのは松文館の菅野さんで、編集プロダクションEUオフィスでした。この二誌には、ガロの作家も多く執筆されていて、蛭子さん、杉作さん、ひさうちさん、鈴木翁二さん、近藤ようこさん等々、そうそうたるたるメンバーでした。他に原律子さん、桜沢エリカさん、岡崎京子さんたちも執筆されていました。私も当時コラムの頁を頂いていたので、そんなメンバーでちょくちょく飲み会が開かれ、ガロよりも先にEUオフィス繋がりで知り合ったのです。
 マディさんは、なんきん・西秋ぐりんの両氏と高校の同級生で、三人とも二誌で活躍されていました。マディさんの作品はアヴァンギャルドな作品ゆえになかなか表立って評価されませんでしたが、唯一、当時から呉智英さんが「マディ上原は天才だ!」と高く評価されていたことを、マディさんはとても喜んでいました。
 その後、根本さんとの「お岩」での活躍など、皆さんご存じの通りで、今年も根本さんのイベントに出演するなど、作家たちとの交流はずっと続いていました。突然「アックス」に作品を持ってこられたときも、会社勤務が忙しいこと、また職場の仲間とバンドを組んでライブをやっている事など、すごく楽しそうに話していました。「アックス69」で伏見直樹さんを迎えて開催した麻雀対談にも駆けつけてくれ、対談終了後、麻雀を楽しまれました。ホントについ最近のことです。

 同居されていたSさんの話では、勤務先の仕事も充実していてまたマンガを描く意欲もたくさんあって「今、自分はすごく幸せだ」と口癖のようにいっていたそうです。新作マンガのラフもたくさん描いていたそうです。それを見ることは残念ながらもう出来ません。山田花子さんが亡くなったときに、お葬式後に根本さんと蛭子さんと三人でお線香を上げに来て下り、マディさんは「無念だ、残念だ」と山田花子の死を惜しんで、たくさんの涙を流されました。おなじマンガ家としての思いがとても大きかったのだと思います。
 そんなマディさんも突然鬼籍に入られました。とても残念です。新作に意欲を燃やしていたのに、それが見られないことが無念でなりません。

 今日は夕方六時からお通夜、明日は告別式です。みんなでマディさんを見送りに行ってきます。(手塚)
posted by 青林工藝舎 at 14:05 | TrackBack(0) | 日記
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